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鼻うがい完全ガイド|効果・正しいやり方・注意点を耳鼻科情報にもとづいて解説
「鼻に水を入れるなんて怖い」「ツーンとしそうで嫌だ」
鼻うがいにそんなイメージをお持ちの方は、とても多くいらっしゃいます。
一方で、耳鼻咽喉科の現場や鼻副鼻腔炎のガイドラインでは、生理食塩水による鼻洗浄(鼻うがい)は補助的な治療として推奨される場面もある、歴史あるセルフケアです。
この記事では、
- 鼻うがいとは何か
- どんな効果が期待できるのか
- 正しいやり方と頻度
- やってはいけないケース・注意点
を、耳鼻科領域の情報やガイドラインを踏まえつつ、初めての方でも怖くなく始められるレベルまで丁寧に整理しました。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりにはなりません。
強い症状がある方、持病や妊娠中の方、お子さまに行う場合などは、必ず医師にご相談ください。
鼻うがいとは?

鼻うがいの基本:生理食塩水で鼻の中をやさしく洗うケア
鼻うがいとは、生理食塩水(体液に近い濃度の塩水)で、鼻の中や鼻の奥(鼻腔)を洗浄する方法です。
鼻の粘膜には、
- 花粉やハウスダストなどのアレルゲン
- ウイルスや細菌
- 粘り気の強い鼻水
などが付着しやすく、炎症が強くなると「粘液線毛機能」と呼ばれる自浄作用が落ちてしまいます。鼻うがいは、生理食塩水でこれらを物理的に洗い流すことで、鼻の通りや粘膜環境を整えることを目的としています。
鼻うがいで「できること」と「できないこと」
鼻うがいはあくまで補助的なセルフケアです。
できること(一般的に期待されること)
- 花粉・ほこり・ハウスダスト・PM2.5 などを洗い流すサポート
- 粘り気の強い鼻水や後鼻漏(のどに落ちる鼻水)を洗い流すサポート
- 鼻づまり感・鼻のムズムズ感の軽減の一助
- 鼻手術後のケアとしての洗浄(医師指導のもとで)
できないこと
- 細菌やウイルス感染そのものを「治す」こと
- 副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎を単独で完治させること
- 医師による診断や治療の代わりになること
「薬の代わり」ではなく、
薬や治療と併用されることが多い“環境調整・セルフケア”と捉えるとイメージしやすくなります。
鼻うがいで期待できる主な効果

花粉・ほこり・アレルゲンを洗い流す
鼻の粘膜には、吸い込んだ空気中の花粉やハウスダストが付着します。
鼻うがいで生理食塩水を鼻腔内に通すことで、
- 粘膜表面に付いた花粉・ほこりなどを洗い流す
- 粘り気が強い鼻水を薄めて排出しやすくする
といった効果が期待できます。
花粉症シーズンや、ホコリっぽい環境にいたあとに鼻うがいを行うと、「粘膜にとどまる時間を減らす」という意味で、症状の悪化を防ぐ一助になるとされています。
鼻水・後鼻漏・鼻づまりなどの症状へのサポート
慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎では、粘度の高い鼻汁や後鼻漏が続きやすく、鼻の通りも悪くなりがちです。
鼻うがいは、こうした状態に対して
- 溜まった分泌物を洗い流す
- 粘膜表面を整え、線毛運動をサポートする
補助療法として用いられています。
医療現場・ガイドラインでの位置づけ(補助療法として)
鼻副鼻腔炎の国内外のガイドラインや解説では、ステロイド点鼻薬などの薬物療法と並んで、生理食塩水による鼻洗浄が補助療法として言及されています。
例えば、
- 慢性副鼻腔炎の治療の一部として
- 手術後の鼻腔内清掃として
- アレルギー性鼻炎のセルフケアとして
など、医師の指導のもとで日常的に行われるケースもあります。
鼻うがいはどんな人に向いている?向いていない?

向いているケースの例(一般論)
一般的に、鼻うがいが検討されることが多い例としては、次のようなケースが挙げられます。
- 花粉症シーズンに、鼻水・鼻づまり・ムズムズに悩んでいる方
- アレルギー性鼻炎で鼻水・後鼻漏が続いている方
- 慢性副鼻腔炎で、ドロっとした鼻水や後鼻漏が気になる方
- ほこりっぽい環境・粉じんの多い職場 で働いている方
- 鼻手術後に、医師から鼻洗浄を指示されている方
いずれの場合も、「自分の症状・持病にとって鼻うがいが適切か」は、かかりつけ医に確認しておくと安心です。
注意・控えた方がよいケース(耳の病気・重い持病など)
一方で、以下にあてはまる場合は、自己判断での鼻うがいは避けるか、医師と相談したうえで判断することが推奨されます。
- 中耳炎・耳管機能不全など、耳の病気を治療中の方
- 強い鼻出血を繰り返している方
- 顔面の激しい痛み・高熱を伴う急性副鼻腔炎が疑われる方
- 顔面・鼻周囲の手術直後で、主治医から制限されている期間
- 免疫抑制状態(重い慢性疾患、抗がん剤治療中など)の方
強い圧をかけて鼻うがいを行うと、水が耳側に抜けやすくなり、中耳炎の悪化につながるおそれも指摘されています。
子ども・妊娠中の方が気をつけたいポイント
子どもの場合:
- 必ず保護者が付き添い、圧をかけ過ぎない
- 嫌がるときに無理やり行わない
- うまくできない場合は、小児耳鼻科で相談する
妊娠中・授乳中の場合:
- 生理食塩水による鼻うがい自体は、薬剤を使わない方法として検討されることもありますが、体調や合併症によっては制限が必要な場合もあるため、必ず主治医に相談してください。
鼻うがいの準備①:洗浄液(生理食塩水)の作り方・選び方
生理食塩水とは?濃度0.9%前後が「痛くない」理由
生理食塩水とは、体液の塩分濃度(約0.9%)に近づけた塩水のことです。
真水で鼻うがいを行うと、
- 浸透圧の差によって粘膜がしみる
- 「ツーン」と強い痛みを感じやすい
とされています。
体液に近い濃度に調整することで、鼻うがい時の痛みや不快感を大きく減らすことができます。
自宅で作る場合の作り方と注意点(例)
自宅で生理食塩水を作る場合の一例です(500ml分):
- 清潔な容器に、沸騰させて冷ましたお湯(または煮沸後に冷ました水)500mlを用意する
- 食塩4.5〜5g(小さじ1杯弱〜1杯程度)をよく溶かす
- 37〜40℃程度まで冷ましてから使用する
※塩は、ミネラルや添加物の少ない「食塩」や精製塩が推奨されます。
重要な注意点
- 洗浄液は「その都度作って、その都度捨てる」のが基本
- 長時間置いた生理食塩水は、雑菌が増えるおそれがあるため再使用しない
- 海外など水道水の安全性が不明な地域では、必ず煮沸または滅菌水・蒸留水を利用する
市販の洗浄液・専用洗浄剤を使うメリット
市販の鼻うがい用洗浄液や粉末タイプの専用洗浄剤には、
- 適切な塩分濃度に調整されている
- 粘膜への刺激を抑える成分やpH調整がなされている
- 用量が一回分でわかりやすい
といったメリットがあります。
「自分で濃度を測るのは不安」「毎回計量するのが面倒」という方には、専用洗浄剤を使う方が、安全性と継続しやすさの両面で適している場合が多いです。
温度は20〜40℃が目安|冷たすぎても熱すぎてもNG
洗浄液の温度は20〜40℃程度が推奨されることが多く、
「常温〜人肌程度」のイメージです。
- 冷たすぎると:粘膜を刺激し、痛みや違和感が出やすい
- 熱すぎると:粘膜を傷めるリスクがあるため、40℃を超えないようにする
特に初めての方は、「ぬるま湯」くらいの温度から始めると快適に行いやすくなります。
鼻うがいの準備②:器具の種類と選び方の基本
ボトル式・ポット式・電動式などの違い(概要)
鼻うがいに使われる器具には、次のようなタイプがあります。
- ボトル式
やわらかいボトルを軽く押して洗浄液を送るタイプ。初心者にも使いやすく、携帯性も高い。 - ポット式(じょうろ型)
容器を傾けて自然な重力で洗浄液を流すタイプ。圧が弱く、耳に抜けにくい。 - 電動式
一定の圧と流量で洗浄液を送り出すタイプ。洗浄力は高いが、機器の価格やメンテナンスが必要。
この記事では、「鼻うがいの基本」を押さえることが目的のため、詳細な比較は別記事(鼻うがい器の選び方ガイド)で整理する前提とし、ここでは「自分が続けやすいタイプを選ぶ」ことが最重要というポイントだけ押さえておきます。
初心者におすすめされやすいタイプ
- 手動で圧をコントロールしやすいボトル式
- 重力だけで流すポット式(じょうろ型)
は、「自分で圧を調整できる」「構造がシンプル」「洗いやすい」といった理由から、初めての方にもよく選ばれます。
清潔を保つためのポイント
どの器具を選んでも共通して重要なのが衛生管理です。
- 使用後は、ボトル・ノズルをよく洗う
- 水分をできるだけ切り、風通しのよい場所で自然乾燥させる
- 定期的に、煮沸・熱湯消毒・アルコール拭きなど、器具の材質に応じた方法でしっかり消毒する
- ノズルの共有は避ける(家族でも原則は個人用)
正しい鼻うがいのやり方|基本ステップ
ここでは、ボトル式・ポット式に共通する「基本の流れ」を説明します。
実際には、手元の器具に付属している説明書や、医師からの指導がある場合はそちらを優先してください。
姿勢・頭の角度・口の開け方
まずは「姿勢」がとても重要です。
- 洗面台の前に立つ or 前かがみになってシンクの上に顔を出す
- 頭を少し前に倒し、軽く横に傾ける(洗う側の鼻が上になるイメージ)
- 口を軽く開けて、「あー」と声を出すように喉を開ける
「上を向く」と洗浄液がのど〜耳側に流れやすくなり、「強く吸い込む」と気管に入りやすくなるため、前かがみ+やや横向き+口をあけて「あー」の姿勢を意識していただくと、安全で快適に行いやすくなります。
片側ずつ洗う基本の手順(ステップ1〜6)
- 洗浄液を準備する
- 前述の方法で生理食塩水を作る、または専用洗浄剤を溶かす
- 温度が20〜40℃程度になっているか確認する
- 器具に洗浄液を入れる
- ボトルやポットに洗浄液を入れ、ノズルをしっかり閉める
- 姿勢を整える
- 洗面台の前で前かがみになり、洗う側の鼻が上になるように頭を傾ける
- 口を開けて、「あー」と声を出すように喉を開く
- 洗浄液を鼻の中に流す
- ノズルを上側の鼻の穴に軽くあてる
- ボトルの場合:強く押し込みすぎず、ゆっくり・やさしく押す
- ポットの場合:容器を傾け、自然な流れにまかせる
- 反対側の鼻から、あるいは口から洗浄液と鼻水が流れ出てくる
- 反対側も同じように行う
- 頭を反対側に傾け、同じ手順で洗浄液を流す
- 終わったら、軽く鼻をかむ
- 強くかみすぎず、片鼻ずつやさしくかむ
- しばらく前かがみの姿勢で、残った水分を自然に出しきる
洗浄後すぐに上を向いたり、飛び跳ねるような動きをすると、残った洗浄液が思わぬタイミングで出てくることがあります。数分間は前かがみでゆっくり過ごすと安心です。
終わったあとの鼻のかみ方・後処理
- 鼻のかみすぎは粘膜を傷める原因になるため、「軽く・回数を分けて」が基本
- 鼻水や洗浄液が出なくなるまで、前かがみのまま少し待つ
- その後、ボトルやノズルをよく洗い、乾かす
よくある失敗・トラブルと対処法
「ツーンと痛い」「しみる」場合
主な原因としては、
- 生理食塩水の濃度が低すぎる(真水に近い)
- 洗浄液が冷たすぎる
- 強い圧で一気に押し込んでいる
などが考えられます。
対処の例
- 生理食塩水の濃度を再確認する(0.9%前後を目安に)
- 洗浄液を「ぬるま湯」程度に温め直す
- ボトルの圧を弱め、「やさしく」押すイメージに切り替える
それでも痛みが続く場合や、片側だけ強い痛みがある場合は中止し、耳鼻咽喉科を受診してください。
「耳に水が入った感じがする」場合
- 強い圧で勢いよく流した
- 上を向きすぎた
といった場合、洗浄液が耳管を通って耳に抜けることがあります。
対処の例
- いったん鼻うがいを中止し、耳の違和感が続く場合は耳鼻科を受診する
- 次回からは、前かがみ+横向き姿勢を徹底し、圧を弱める
中耳炎がある方や、耳にトラブルを抱えている方は、自己判断での鼻うがいは避け、必ず医師に相談してください。
むせる・うまく出てこない場合
- 洗浄中に息を吸ってしまう
- 口をしっかり開けていない
といった場合、のど側に流れ込み、むせやすくなります。
ポイント
- 洗浄中は「吸わない」「飲み込まない」
- 口を開けて「あー」と声を出しているつもりで、軽く息を吐き続ける
出血・強い痛みが出たときは必ず中止
- 洗浄中または後に鼻血が出る
- 数回調整しても強い痛みが続く
といった場合は、鼻うがいを中止し、耳鼻科で相談してください。
特に血が混じる・繰り返す場合は、自己判断での継続は控えた方が安全です。
頻度・タイミング|1日何回まで?いつやると効果的?
目安は「1日1〜2回+必要時」
一般的には、
- 日常的なセルフケア:1日1〜2回
- 花粉やホコリを多く浴びたあと:必要時に追加
といった頻度が一つの目安とされています。
やりすぎると、逆に粘膜が乾燥したり、刺激になってしまう可能性もあるため、「気持ちよく続けられる範囲」で回数を調整することが大切です。
花粉シーズン・風邪シーズンの活用の仕方
- 花粉シーズン
- 帰宅後や就寝前に鼻うがいを行い、粘膜に付いた花粉を洗い流すイメージで
- 風邪シーズン
- うがい・手洗いと同様に、鼻腔を清潔に保つセルフケアの一環として検討されることがありますが、発熱・強い痛みを伴うときは自己判断で行わず、医師の診察を優先してください。
点鼻薬との併用タイミング
ステロイド点鼻薬などの薬剤と併用する場合は、
- 先に鼻うがいで鼻腔内を洗浄する
- そのあとで、点鼻薬を使用する
ことで、薬が粘膜に届きやすくなるとする資料もあります。
ただし、使用中の薬の種類や症状によって適切なタイミングは変わるため、必ず処方医・薬剤師の指示を優先してください。
医師に相談すべきサイン
鼻うがいを行っている・行おうとしているかに関わらず、次のような症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科や内科を受診することが推奨されます。
受診を急いだ方がよい症状の例
- 高熱が続く
- 顔面・目の奥・歯の痛みが強い
- 黄色〜緑色の膿のような鼻水が大量に出る
- 片側だけの強い痛み・鼻づまりが続く
- 視力の異常・眼の腫れ などがある
これらは急性副鼻腔炎や合併症を示唆することもあり、
鼻うがいでしのぐ段階ではありません。必ず医師の診断を受けてください。
持病・既往歴がある方が確認すべきポイント
- 過去に副鼻腔の手術歴がある
- 慢性副鼻腔炎や重症アレルギーの診断を受けている
- 免疫抑制状態・重い持病がある
といった場合は、鼻うがいを始める前に、
「自分の病状で鼻うがいをしてよいか」「頻度はどのくらいか」を主治医に確認しておくと安心です。
自宅で安全に鼻うがいを続けるためのチェックリスト
衛生管理・ボトルや器具の洗浄
- 毎回、使用後にボトル・ノズルをしっかり洗う
- 水分をよく切り、風通しのよい場所で乾燥させる
- 定期的に、器具に応じた方法で消毒する
- ノズルの共用は避ける(家族でも基本は一人一つ)
洗浄液は「毎回つくって毎回捨てる」が基本
- 洗浄液はその都度作り、使い切りにする
- 作り置きは雑菌増殖のリスクがあるため避ける
- 粉末タイプの専用洗浄剤は、1包ごとの使い切りになっているタイプが便利
無理なく続けるためのコツ
- 「毎晩お風呂上がりに1回」など、生活リズムに組み込む
- 最初は短時間・少量から始め、慣れてきたら適切な量に増やす
- 「痛い」「怖い」と感じるときは、無理をせず、姿勢や温度を見直す
「怖いケア」ではなく、「やるとスッキリして気持ちいい習慣」に変わってくると、自然と継続しやすくなります。
まとめ|「怖い」から「快適」に変えるために大事な5つのポイント
最後に、鼻うがいを安全・快適に続けるためのポイントを、5つに整理します。
- 真水ではなく、生理食塩水を使う(濃度0.9%前後)
- 洗浄液の温度は20〜40℃程度に保つ(冷たすぎ・熱すぎはNG)
- 前かがみ+少し横向き+口を開けて「あー」の姿勢で行う
- 圧をかけすぎない(特にボトル式は「やさしく」押す)
- 器具・洗浄液の衛生管理を徹底する(毎回作って毎回捨てる)
この5つさえ押さえておけば、
多くの方にとって、鼻うがいは「怖いこと」から「意外と気持ちいい習慣」に変わっていきます。
今後、別記事では
- 症状別(花粉症・副鼻腔炎など)の鼻うがい活用法
- 器具の選び方・比較
- ハナリラを使った具体的な鼻うがい手順(写真付き)
などを、さらに踏み込んで解説していきます。